シンガポールONE Passに新制度|2027年「Investment Management Track」導入へ

2026年8月19日、シンガポール金融管理局(MAS)は、シンガポールの資産運用拠点としての競争力をさらに強化するため、新たな施策を発表しました。

その中でも、就労ビザの観点から特に注目したいのが、Overseas Networks & Expertise Pass(ONE Pass)に、新たに「Investment Management Track」を設ける方針が発表されたことです。新しいトラックは2027年からの導入が予定されており、世界で活躍する資産運用業界のトップ人材やシニア投資専門家をシンガポールへ呼び込むことを目的としています。ONE Passの基本的な制度や申請条件については、過去のコラムで詳しくご紹介していますので、こちらをご参照ください。

今回MASとシンガポール人材開発省(MOM)が導入を予定しているのは、ONE Passの枠組みの中に設けられる、資産運用業界に特化した新しい申請トラックです。

新設される「Investment Management Track」とは?

対象として想定されているのは、世界的に活躍するリーダー層や、経験豊富な投資専門家など、シンガポールの資産運用業界に大きく貢献する可能性がある、またはすでに大きく貢献している人材です。

具体的には、ファンドマネージャー、ポートフォリオマネージャーなど、資産運用業界で高度な経験や実績を持つ人材が主な対象になると考えられます。

Straits Timesによると、この新しいトラックは、世界のトップクラスの投資人材をシンガポールへ誘致し、質の高いポジションを国内に増やしていくことを目的としています。

注目ポイントは「給与の評価方法」

今回の発表で特に注目したいのが、給与の評価方法が資産運用業界の実態に合わせて見直される可能性があることです。

現行のONE Passでは、原則として月額固定給与S$30,000という基準があります。しかし、資産運用業界では、報酬のすべてが固定給与として支払われるとは限りません。例えば、固定給与に加えて、業績連動型の賞与や、投資実績・ファンドの運用成果に応じた報酬が支払われるケースがあります。

今回発表されたInvestment Management Trackでは、こうした業界特有の報酬体系をより適切に評価できるよう、投資実績やファンドの運用成果に連動する報酬についても給与評価に反映することが検討されています。

これは、これまでのONE Passの給与審査とは異なる、非常に興味深いポイントです。

「月額S$30,000未満でもONE Passが取得できる」という意味ではありません

ただし、ここは注意が必要です。

今回の発表を、「資産運用業界であれば、月額S$30,000未満でもONE Passが取得できる」と解釈するのは、現時点では適切ではありません。

2026年8月現在、Investment Management Trackについて、

  • 具体的な給与基準
  • 必要な職歴
  • 役職
  • 投資実績
  • 運用資産規模
  • その他の審査基準

などは、まだ正式に発表されていません。

現時点で分かっているのは、資産運用業界における報酬体系を踏まえ、給与の評価方法をより柔軟にする可能性があるということです。詳細については、2027年度予算の時期に発表される予定です。新制度自体も2027年からの導入が予定されています。

なぜシンガポールは資産運用人材を呼び込みたいのか

背景には、シンガポールが世界有数の資産運用の国際拠点としての地位をさらに強化したいという政府の戦略があります。MASによると、シンガポールの資産運用業界は金融セクター全体の約15%を占めています。また、過去5年間では平均年率7.5%で成長し、資産運用規模は約7兆シンガポールドル(日本円で約880兆円)に達しています。

今回発表された施策は、ONE Passの新しいトラックだけではありません。

MASは同時に、

  • 一定のファンドマネジメント報酬に対する新たな税制優遇措置
  • 新たなヘッジファンド投資プログラム

についても発表しました。

つまり今回の施策は、単純に外国人の優秀なファンドマネージャーへ就労ビザを発給するという話ではありません。資本・ファンド・企業活動・人材をシンガポールへ集積させるための、より大きな金融政策の一部と考えることができます。

ONE Passは「戦略産業別」の制度へ?

今回の発表でもう一つ興味深いのが、ONE Passの今後の方向性です。

シンガポール政府は2026年3月、ONE Pass AI and Tech Trackを2027年1月から導入することも発表しています。この新しいトラックは、AIや量子コンピューティングなどの重要・新興技術分野における世界トップクラスの人材を誘致するもので、既存のTech.Passを置き換える予定です。

そして今回、新たに発表されたのが、

ONE Pass Investment Management Track

です。

今後のONE Passは、従来の一律的な高所得者向け制度だけではなく、

AI・Tech

Investment Management

といった、シンガポールが国家戦略として重視する分野ごとに、業界の実態に合わせた申請ルートを設けていく方向に進んでいるように見えます。

実際、ONE Pass保持者は2023年末の約3,600人から、2025年末には約8,500人まで増加しています。また、約70%が金融・保険サービス、情報通信、専門サービスの3分野に集中しています。

今回のInvestment Management Trackの新設は、こうしたONE Pass制度の進化を示す動きの一つといえそうです。

今後の発表に注目

Investment Management Trackは2027年からの導入が予定されていますが、具体的な申請要件については、今後発表される予定です。特に資産運用、ファンドマネジメント、投資運用などの分野でキャリアをお持ちの方にとっては、給与をどのように評価するのかどの程度の役職・実績が求められるのかという点が、今後の大きな注目ポイントになります。

SG Visa Globalでも、MOM・MASから具体的な申請条件が発表されましたら、改めて最新情報をご紹介したいと思います。

※本記事は2026年8月21日時点で公表されている情報をもとに作成しています。制度・申請条件は今後変更される可能性がありますので、実際の申請時には最新情報をご確認ください。

参考資料